2017/09/21

Bak

どったんばったん大騒ぎで仕事していると、自分や周囲の発言に、「まじか、しぬわ、きれた、やばい」のような3文字言葉が頻出している。
それとは全然関係ないけれど、学名にも3文字の属なんかがあって、Cis(ツツキノコムシ科)とかUla(ガガンボ科)みたいに昆虫図鑑でもいろいろみかける。

ダニでも3文字の属がいくつか使用されていて、大阪の室内塵ではKerやBakといった属のツメダニがみられる。

今年の盆休みに、和泉市の住宅でBak sp. を採集して、先日ようやくプレパラートにした。



Bak属は和室の畳から時々見つかるのだが、今まで同定してみようとしたことはない。
文献を探し出して検索してみると、膝節に生えている毛が第I脚から第4脚までの順で2-0-1-0だとか、周気管中央が垂直に近い配置になっているというあたりで、B. ligyscutatusにたどり着く。ブラジルの標本で記載された種だ。日本と地理的に離れた新大陸のダニだが、かつては畳用として相当量の藁が中南米から日本に輸入されていたことを考えると、あまり不思議な話でもない。

B. ligyscutatus が侵入種かということも、何ともいえない。ダニレベルの大きさの生き物は、方々で面倒を起こしてるってことでもない限り、研究者からもたらされる情報は多くない。Bakたちが、大昔から日本にいた可能性だってあるだろう。

Bakって単語の不思議な響きも、このダニの特異さをそこはかとなく表しているかのようだ。ペットのイヌの名前なんかにもありそうだけど(爆)。

2017/09/11

アリ専用粘着トラップ

地べたに使い捨てコップを埋めて、カルピスなどを入れておけば、翌日は素敵なアリ入りスムージーが出来上がっているので、アリ調査には最高だ。
ところが、柔らかい地面がないと埋めにくいとか、保存剤を入れていないとあっという間に腐敗するとか問題点もいろいろある。
かなわないのが、ケモノやトリで、コップを引き抜いて散らかしたりする。唐辛子みたいな忌避剤を使用するという手もあるが、効果はイマイチ。

ヒアリ調査の対象となる場所は、どこでもだいたい、コンクリートやアスファルトなどの硬い地表が多いから、もとよりコップは埋められない。
だから、港湾地域のアリ調査には、一般的に小型の粘着板(ごきぶりホイホイ類似品)が使用されている。ところが、このホイホイ型粘着板にも問題点は多い。

何の対策もせずに設置すると、粘着面を汚す余計な付着物とムシの分離が困難、というか砂やゴミだらけでムシが見えないってことになりがち。
トラップを固定していないと、風で吹き飛ばされてたり、雨で流されたりする。
誘引餌は必須と思うが、多すぎると粘着面を覆ってムシがくっつきにくくなる。
避けがたいのが、粘着面に最初に付着したヤツが、後から来た別のヤツに食い散らかされたりする点だ。
港のコンテナヤードなんかでも、カラスやネコといった招かざる連中がいて、粘着板にちょっかいを出してくる危険もある。
そんなこんなで、ホイホイ型粘着板を野外で使用するのは意外と難しい。


目視調査できる人がたくさんいるのなら、日中、ちゃんと現場を実際に見てもらうほうが良いに決まってる。でもそんな人の数は限られているので、捕獲器調査に頼らざるを得ない。
なんといっても粘着板の優れた特徴は、人がいないときにもモニタリングをし続けてくれる点にある。

というわけで、野外に置いたホイホイ型粘着板の意義は高いとは思うけれど、もうちょっとアリ類を調べやすくできないものだろうか?
・誘引餌については、米国の文献では、砂糖は成績が良くなくて、たんぱく質を含むものやピーナツバターとか、トウモロコシ粉を調理したものなどが有用てなことが書いてあるけど、巣が形成されている場所付近での食物選択性のデータであり、とりあえず追従しているが、移動中の小集団にも適用できる方法かどうかはちょっと疑問もある。
グラニュー糖のほうは、餌が散らかってもアリを判別しやすいから、検査する時は助かる。どんな誘引餌がいいかは今後も検討を続けたほうがよさそう。

・台所用品の水切りネットをホイホイにかぶせたら、巨大ゴキブリや巨大ナメクジや落ち葉くらいは防げそう。
・環境にもよるだろうけれど、設置期間は短いほど捕獲種が劣化しにくい。暑い夏に調べるなら一晩設置で十分と思う。一週間くらいもするとゴキブリだのコオロギだのといったヨコシマな連中が粘着面で動けないアリをかじって、その残渣もナメクジがキレイにしてくれたりなんて危険が高まる。
・ホイホイ型ではなく、アリ調査専用品として市販されている「むしむし探偵団 ② アリシリーズ」を使用すると便利。テレビを見ていると、ヒアリの調査に実際に使用されている状況が写されていたりする。


この製品は、粘着面の上にネットがついていて、さらに黒い樹脂カバーが本体周囲を覆っている。アリが付着しやすい設計だ。
ネットの目開きは、アカカミアリの大型働きアリとかクロオオアリの頭幅より狭いが、クロオオアリなんかだとネットを咬み破って粘着面に付着することが確認されているので、実際の使用には問題ないだろう。
ネットにより大きなムシが捕まらないということは、先に捕まっている小型個体がかじられにくいので、同定する側としても作業しやすい。
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2017/09/03

いにしえの外来種

SNSにケシツブのようなアリ写真をのっけるだけなのに、タダで的確な答えがもらえるヒアリ警察の便利さは圧倒的だ。
従来から、ムシの相談にのってもらうことも可能なサイトってくらいなら、いろいろあった。でも、分類対象が限定的とはいえ、短時間でガチな答えが返ってくるなんてもんは、そうなかったように思う。

ちょっと不安になってくるところもあって、あまりに便利すぎると、ムシの分類と全く向き合わないようになる人が更に増える気もする。
ムシの同定なんかにコストかけるのは、やっぱバカバカしいよねなんて風潮が、一般の人だけでなく、害虫駆除会社にも強まりはしないかってあたりも。
類似の無料サービスが家屋害虫すべてに拡大されて、やがては、ムシの困り事をつぶやくだけで、「それは、○○です。○○で駆除できます」という答えがプッシュ通知される世の中になりそう。害虫駆除業者の未来なんてどうなるか分からないが、どう転んでも殺虫剤メーカーだけは安泰ぽい。

ヒアリといえば、先日大阪市の埋め立て地での調査に、私も(ムリムリ)参加させて頂いた。
炎天下の目視調査は大変だったが、埋め立て地で天下争いをしている在来種のアリ数種をたくさん見つけたり、ルリキオビジョウカイモドキと思われる種を観察(逃げられた)したりで、大戦果ヲ挙ゲリ。

作業で持ち帰れた甲虫は、なんということもない普通種のオオツヤホソゴミムシダマシ2個体だけだったが、一応は参考資料として標本にするため同僚に渡した。すると、2個体ともオオツヤホソゴミムシダマシかどうかアヤシイと再同定に差し戻しされてしまった。

2個体とも雄だが、交尾器には差異がみられた。
Aの個体は、前胸背板後角があまり外側に出ていないことがちょっと気に入らないが、オオツヤホソゴミムシダマシでよさそう。
Bの個体は、明らかに前脚脛節や頭部の形状が違っていた。日本産ゴミムシダマシ大図鑑(2016)の図版を絵合わせしてみたら、ナガサキツヤホソゴミムシダマシ Menephilus medius に似ている。われらがバイブル原色日本甲虫図鑑第3巻(1985) では図がなくて、ツヤホソゴミムシダマシの和名で本州、九州;中国に分布と掲載されてた種だ。新しい図鑑によると、長崎の標本しか確認されていないらしい。
Bは脛節の途中がくびれたように細い。

前胸背板後角

長崎というとトゲムネミヤマカミキリみたいに、史前帰化種ではないかと考えられている甲虫がいる地だ。ナガサキツヤホソゴミムシダマシってヤツも、ひょっとしたら日本の港々でオオツヤホソゴミムシダマシと同所的に細々と暮らす、とても古い外来種なのかも知れないと思った。

2017/08/06

英語だとホラアナのチャタテムシ

京都市にある静謐な寺院の御堂の床で、小さなチャタテムシをみつけた。
外は暑かったけれど、その建物の中は真っ暗でひんやりとしていた。

意外と採集しにくいチャタテムシだった。
床に敷き詰めた石板の上に静止している成虫を見つけて、ゆっくり近づくと光を忌避しているのかスッと飛んでどこかに消えてしまう。
何匹にも逃げられ一向に捕まらないので、本当は実体のあるムシではなく、ムシの霊をみているのかもしれないと思い始めた頃、なぜか懐中電灯の光の中でも静止したままの成虫を見つけて1個体採集できた。


ヒメチャタテの仲間の完全な個体の標本を作れると喜んでいたけれど、いつものように他の業務をしている間に、採集した虫のことをすっかり忘れてしまっていた。2日後にフイルムケースの底でカビが生えている成虫をみて、やっと思い出した。

ゲンナリとしながらも死骸を取り出してみると、ヒメチャタテの仲間ではなく、セマガリチャタテの一種 Psyllipsocus sp. だった。
ときどき室内で色白な短翅型のヤツがみつかるが、長翅型は初めてみた。身体が暗褐色だ。
そんなものをカビさせたってことに、打ちひしがれながら翅などの標本をつくってみた。

長翅型の成虫の頭部や、脚の爪なども観察して、文献と照らし合わせてみた結果、
Psyllipsocus ramburii Selys-Longchamps, 1872 と判断した。
翅脈は独特な感じで個体変異が大きく、翅が大きくなるほど翅脈が複雑になる傾向があるらしい。

翅脈には剛毛が生えていた。

頭部

大あごの内側にある内葉という棒のような器官。

脚の爪

和名はないっぽいけれど、世界中で普通に見つかっていて、海外の室内害虫のリストに載ってることもあるヤツだ。今まで食品工場などでみてきた短翅型もたぶん同じ種と思う。建物で発生するパターンは、まだ掴めていないけれど、今後も注意していたい種だ。
日本産の同科には、セマガリチャタテ Psyllipsocus sauteri (Enderlein, 1906)がいて、長翅型しかいないとか腹部に赤褐色の点々模様があるとかって話だけれど、そっちもゼヒみてみたい。

BugGuide.Netでは、セマガリチャタテ科 Psyllipsocidae にCave Barklice っていう英名が当てられている。洞窟とかでもよく見つかるらしい。

過去記事の短翅型雌。 

2017/06/11

野原の捕虫紙

和泉市で、花が終わったセイヨウヒキヨモギを観察していると、茎の腺毛にたくさん付着している虫が気になった。
なにか面白い微小甲虫がついていそうだったので、2~3本ほど抜いて持ち帰り観察してみた。
クロバネキノコバエ科、アブラムシ科がたくさん付着していて、アザミウマ目も付着していたが、甲虫はムクゲキノコムシ科だけしか見つけられなかった。

ええ虫は見つからなかったものの、思ってた以上にムシが捕まっていて面白かった。
地道に観察していれば、意外なムシに出会えるかもしれないって気がした。
捕虫器の用紙の代わりに・・・とかは無理やろね。


セイヨウヒキヨモギは半寄生植物らしく、抜いてきた株はメリケンカルカヤのなれの果てみたいな枯草と根が絡みあっていた。



根っこのあたりを水洗いしてみると、吸根 haustoria と思われるものを観察できた。




花が満開だったころのセイヨウヒキヨモギ。

アフリカあたりでは、こいつの親戚筋のストライガとかいうやつが、とんでもなく悪行の限りをつくしているらしい。









2017/05/24

大きなアナタカラダニの一種

5月の終わりに近づくと、アナタカラダニの大発生も山を越えたようにみえる。
とはいえ、いるところにはまだまだウジャウジャといる。


花粉を食べるらしい。オニタビラコの花のなかにいるやつをジッと見てても、本当に何を食べているのかは確認できなかった。

西淀川区の少し日陰のマンホールの蓋を見ていると、いつも見かけるアナタカラダニの仲間(たぶんカベアナタカラダニという種)がたくさんいた。


そのなかにちょっと大きいやつが混じっていた。色はくすんだ赤色。



並べて拡大撮影してみた。結構デカい。



Balaustium spp.


デカいがウルヌラがあり、アナタカラダニの仲間と思う。
海岸に近いトコロにいる黒っぽいアナタカラダニと色合いが少し似ていたが、サイズが異なる。アナタカラダニもよく見てみると、ホントにいろいろだ。

Balaustium sp.




2016/11/12

コツノアリの雄有翅虫

雑木林の林縁で小さな朽ち木を、いつになく注意深くチビチビと削っていた。
コジイと思われる朽ち木の端で、数個体のチビナガヒラタムシが出てきたためだ。
たどっていった孔道は、こちらの期待を打ち砕くように、すぐにコツノアリ Carebara yamatonis のコロニーに変わってしまった。

コツノアリの働きアリの体長は1mmほどだが、雄は3mmに達する。
こんな羽アリだけを採集してしまった場合には、名前なんか分りっこないと思う。




コツノアリ雄の交尾器