2016/02/16

ヒメケダニの一種の幼虫


金剛山の山頂付近を、9月頃の夜に歩けばドウキョウオサムシに出会える。その頃は新成虫が多いので、つまみ上げると体がまだ少し柔らかい。
そんなオサムシの体表にたくさん着いているタカラダニっぽいやつを以前観察したとき、よくみると変すぎる形態で同定できなかったことがあった。
野外のダニを同定できないことは普通なので放置していたが、ダニ学マニュアル第3版をみていると似たようなのを見つけたので、観察しなおすことにした。

これが膨らむと、いつも見みかけるようなタカラダニ幼虫みたいになる。

たぶんダニにも、自分の脚がどうなってしまったのか分かってないんだと思う。



馬蹄型の口とか、第3脚の末端節がややこしい事になっていたり、後方の胴背板が複数あったりというあたりから、ヒメケダニの一種 Hexathrombium sp. の幼虫と同定した。
この属の幼虫は、オサムシ類、アリガタハネカクシ類、オオキノコ類に外部寄生することが知られていて、中国、北米、チリ、アフリカなどで6種ほど記録があり、日本産は研究中の模様。
Hexathrombiumが含まれる科についてもいろんな考え方があるらしくて、ナミケダニ科Trombidiidaeの亜科とか、バッタケダニ科Eutrombidiidaeとしてあつかわれていたりしていたが、最新の研究ではヒメケダニ科Microtrombidiidaeに統合されている。

ダニは多節の胴体を持つ種から進化して1節の胴体になったらしいけれど、このダニの背板はいくつかの節に分かれているように見えて、先祖の名残みたいな雰囲気を感じる。
ダニの胴体の進化については、「ダニ分類の聖務日課 Bréviaire de taxonomie des acariens」という厳かなタイトル?のダニ学の心得書(PDF)に解説がある。
著者は、きっと大聖堂みたいなところにいて法衣をまとっているに違いない。