2016/04/29

福江島産マイマイカブリのコウチュウダニ


五島列島産マイマイカブリで、甲虫に付着するタイプのダニを探してみた。
10年ほど前に知人から頂いたムシだが、 さやばねの下からは狙いの種は見つからず、コウチュウダニ不明種が少しと、多数のケナガコナダニが出てきただけだった。
もちろん、どのダニも古い死骸ばかりだが、コウチュウダニの体内に潜り込んで死んでいるケナガコナダニの幼虫がいたりして、コウチュウダニの保存状態は良くなかった。





コウチュウダニ科の属の見分け方は難解で分からないけれど、Photiaかその近縁の属と思われた。雄の肛吸盤周辺の剛毛や、雌の体型はPercanestriniellaによく似ていると思う。

ちょっと、手持ちの標本をあたっただけでも謎だらけの世界だ。卒論テーマを土壇場になってもまだ決めてなくてアセっている生物系学生さんには、コウチュウダニってのはうってつけと思う。その辺のヘッセのエーミールみたいなオサムシ屋さんの標本を借りまくって、さやばねをメキョメキョするだけで、きわめて短期間で材料は手に入りまくりだ。
「そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。」みたいな。おすすめ。





顎体部なしの雌


ケナガコナダニに体内を食い荒らされたあとに、顎体部が脱落してしまったコウチュウダニの雌などは、体の前後が不明なUMAのようだ。

そういえば米国のダニ学の草分け的分類学者が、とあるコウチュウダニについて、顎体部と肛門側の向き、つまり前後を逆に記載してしまった古い失敗例もある。
カンブリア紀以前の化石種であれば、研究が進むと体の前後や上下が逆だと分かったなんて話もあるが、現生種でも類似の誤認があるってのはダニならではと思う。
この失敗は、後にネタにされたこともないようで、ダニ学者たちの人格に深いものを何気に感じてしまう。